前回の記事では、筋トレの頻度(週に何回やるのか問題)について取り上げました。
筋トレの頻度について書きました。
— 山﨑裕太 (@hari_sports_YY) May 12, 2020
ある程度の動作が身につくまでは、頻度や反復がとても有効ですが、
競技歴も長くなってくると「低強度の量的トレーニング」だけでは能力向上が頭打ちになるでしょう。https://t.co/vShq8sv3Fb
今回の記事では、レクリエーションレベルの参加者による、筋肥大をターゲットとした筋トレの「セットレスト(セット間の休憩時間)」についての論文をご紹介いたします。
トレーニングの現場では、「レストが短いほうがキツくてトレーニングになって良い」みたいなことを言われていたりもしますが…。
私見まとめでは、レストの考え方なども少しだけ触れてみたいと思います。
論文結論:筋肥大に対しては、セット間の休憩は「長い」ほうが良い!(1分よりも5分)
論文題名:Short inter‐set rest blunts resistance exercise‐induced increases in myofibrillar protein synthesis and intracellular signalling in young males
著者:James McKendryら
公開日:2016年4月29日
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/EP085647
論文内容
筋トレ(レジスタンスエクササイズ)で、エクササイズ間の休息時間が「短い・長い」で比較したとき、筋肥大反応への影響を調査しました。
実験参加者
・16名の若い男性(18〜34歳)が参加。
・週に1回以上の筋トレを、1年間以上実施していました。(recreationally trained)
・1分レスト群(8名)と5分レスト群(8名)とに分けられました。
実験エクササイズ
・「レッグプレス4セット」および「レッグエクステンション4セット」を全て限界の回数まで実施。
・負荷強度は1RM75%で設定されました。
・1セット内の反復回数が(8回以下の場合は5kg負荷を減らす)または(14回以上の場合は5kg負荷を増やす)調整をされました。
・実験参加者は、筋生検や血液検査や食事管理など様々な調査をされましたが、ココではその詳細を割愛します。
結果
・1分レスト群では、3セット目から大幅に反復回数が減少しました。
・5分レスト群では、セット全体で反復回数の減少が見られませんでした。
・筋たんぱく合成(MPS)は、運動後4時間の時点で、5分レスト群が有意に高かった。
・血中乳酸濃度は、運動直後で、1分レスト群が有意に高かった。
・細胞内シグナル伝達(intracellular signalling)は、1分レスト群で、鈍化しているように見られた。
私見まとめ
今回の実験では、レクリエーションレベルの参加者による調査でした。
この結果を、トップアスリートレベルにも同様に適応させることは困難かもしれません。
というかもう、「論文結果が全ての人類に適応できるモノ」だなんていう認識を持っている読者はいないと思うので…このような配慮した一文は不要なのかもしれませんが、つい書いてしまいます。
筋肥大を狙いとしてトレーニングを実施する時は、【充分なレスト】で回復してから次のセットへ向かうことが良いと言えます。
レストが「1分か5分か」の問題ではなく、
今回の実験では、トレーニングの総負荷量が大きな要因でしょう。
充分なレストを取ることで、次のセットでも「負荷と反復回数が高い数値」で実施ができます。
水泳の競技練習でも、
最初から全力で行って、後半の本数はヘロヘロになりながらただ泳ぐだけ。
こういった練習のやり方に美学のようなものを感じる人もいるとは思います。
感性や価値観に、あーだこーだ言うつもりは全くありません。が、適切だと考えられるトレーニングを選手には提供していきたいものです。
高強度インターバルトレーニングでは、「休憩をしっかりと取ろう」という論調が強いです。
では、レストを短くして取り組むトレーニングには、何も効果が無いのでしょうか?
そんなことありません。
十数秒以上のチカラを発揮する運動では、【エネルギー回路】でトレーニングを組み立てることも必要だと考えています。
ほとんどの競技コーチであれば、当然の認識だと思いますが…。
有酸素性・無酸素性のエネルギー回路
HIITと呼ばれる高強度運動では、たくさんの方法が提案されています。
タバタ式トレーニングも、その中のひとつです。
高強度トレーニングは、持久系スポーツでも大きな効果が期待されています。
【高強度イコール全力】ではありません。
特に競技スポーツでは、高強度の中にある要因(ペース配分やテクニックなど)が結果を大きく変動させるのでしょう。
とにかく全力で頑張ることだけで辿り着けるところもあるかと思いますが…。
水泳選手が、バーピージャンプ運動でのタバタ式トレーニングで何らかの能力を最大限に向上させたとしても
その高めた能力だけでは、水泳のタイムという結果に直結させることは難しいでしょう。
高めた能力を、どうやって競技に活かしていくか。ご自身のパフォーマンスへと転換させていく認識が必須だと考えています。
きっと当ブログ読者の方々ならば、環境や活動に制限がある中での【工夫や創造】は得意分野だと思います。
我々、実践者たちの「腕の見せ所」です。頑張りましょう。
こういった、筋肥大とかエネルギー回路とかの話は、「何の運動を頭に浮かべているか」で認識の違いが出てくるよね。