【競泳】高強度レースペーストレーニングの比較(50m×20本 vs 100m×10本)

競技歴を重ねてきた選手の方々にとって、技術練習とともに生理学的に肉体を鍛えることの重要性も高まると思います。

大量のトレーニング(低~中強度)によって肉体を鍛えることも大切ですが、

少量で時間効率の良いトレーニング(高強度)を取り入れていく必要性も認識されてきていると感じます。

※強度の分類について(No.157 【競泳練習メニュー】トレーニング強度の割合についてまとめ

今記事では、水泳練習メニューの「高強度トレーニング」についての比較した研究論文をご紹介していきます。

目次

論文紹介:高強度トレーニング2つの手法を比較

題名:Lower fatigue and faster recovery of ultra-short race pace swimming training sessions
著者:Francisco Cuenca-Fernándezら
公開日:2021年5月25日
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34032530/

論文結論:50m×20本は100m×10本よりも、レースペース設定タイムを維持し、神経筋の疲労が少なく、乳酸値も低かった

✅血中乳酸値は、100m×10本のほうが高かった。

(100m×10本:2分後で10.8mmol、5分後で10.1mmol)(50m×20本:2分後で8.3mmol、5分後で7.4mmol)

✅練習タイムは、50m×20本で維持されていたが、100m×10本ではタイム低下が顕著であった。

✅CMJ(ジャンプ力)は、50m×20本の2分後では低下していたが5分後には戻っていた。100m×10本では2分後も5分後も低下したままであった。

論文内容:(50m×20本 vs 100m×10本)実施後の乳酸値と神経筋疲労について比較

■競泳選手14名(平均年齢18歳)が実験に参加

■ベストタイムは男性選手平均56秒、女性選手平均63秒の集団でした。

■2種類のトレーニング方法(50m×20本、100m×10本)で、ペース・ストローク数・血中乳酸値・CMJの高さを比較しました。

※トレーニングの目標タイムは、200mトライアルタイムから算出しました。100m×10本では、200mタイムの95%÷2。50m×20本では、200mタイムの95%÷4で設定されました。
サイクルは、ワーク:レスト=1:1で設定されました。

■CMJ(カウンタームーブメントジャンプ)は、トレーニング実験前に測定。

■トレーニング実験後、2分後と5分後にて、CMJと血中乳酸値が測定された。

私見まとめ

今回紹介した研究のトレーニング方法は、USRPT(50m×20本)とRPT(100m×10本)を比較した内容でした。

※USRPTとは?(No.91 【水泳の練習方法】USRPTというレースペース練習)

実験に参加した14名の水泳選手による結果は、

USRPTというトレーニング手法が、RPT(Race Pace Training)と比べてレースペース泳速度を最後までキープさせ、神経筋(ジャンプ力)の疲労が少ないという結果が見られました。

血中乳酸値の結果は、100m×10本のほうが有意に高かったようです。

トレーニングの2分後および5分後でも乳酸値があまり下がることなく高いまま(どちらも平均10mmol/L)だったことを考えると、解糖系エネルギー回路は大きく働き、乳酸クリアランス能力への刺激を与える方法として興味深いです。


今研究に参加した競技者のタイムを見ると、日本選手権やジュニアオリンピックに出場できるレベルでは無いと考えられます。

なので、より競技トレーニングを積んでいる集団が被験者の場合は、異なる結果が出てくることも考えられます。

時期によってトレーニング方法を変化させていく考え

レースから遠い時期はRPTに取り組みトレーニング刺激を高めて、

レースから近い時期はUSRPTで泳速度の発揮をするが疲労を蓄積させすぎない。

このようにトレーニングプランに反映させていく考えもありかと思います。

連続で20本とか10本のハードはキツイよ

レース速度は発揮した練習がしたい!でもそんなに本数が多いのはムリ!

そんな人にオススメしたい「クラスターセット」という方法があります。

レジスタンス(ウエイト)トレーニングでも用いられているやり方です。

※クラスターセットの有効性に関する論文(Christopher Latella:2019

例えば、USRPT(50m×20本)というボリュームを実施する場合、3~5本ごとにレスト時間を取ります。

メニュー表記としては

USRPT(50m×20本×1分サイクル)に対して、

USRPTのクラスターセット(50m×4本×1分サイクル×5セット)セットレスト数十秒~数分

このようになります。

取り組む順序

持久能力を高めていくために、まずはクラスターセットで取り組んでいき

目標とするレースペース泳速度を連続で発揮できるようになってきたら、クラスターを減らして、セット内の本数を増やしていきます。

そして最終的には20本×1セットを目指すようなイメージです。

そもそも20本×1セットなんていう本数の多い練習はやらないよ。という考えの人もいるかと思いますが。。

以上。USRPTという手法に関する考察でした。

  • URLをコピーしました!
目次