スポーツ競技者の方々から「どんなウエイトトレーニングやれば良いですか?」といった言葉をもらう機会が増えてきたように感じています。
きっと、筋力トレーニング・ウエイトトレーニングに対する興味関心が広く認知されてきているのだと思います。
筋力向上を目指したトレーニングの重要性が認知された次のステップは、デメリット面を理解することが大切かと。「筋トレやったほうが良いよ」と言われて取り組んだのに結果に繋がらなかったどころかパフォーマンス落ちて抜け出せない。なんて不信感を抱いてしまうことへも配慮していきたい。
No.100記事とNo.198記事では、筋力トレーニング指導者としての視点からトレーニングの順序・頻度、栄養面の問題などを記述しました↓
今記事では、競技コーチ・競技指導者からの視点で戦略の無い筋トレに対する批判を考えてみます。
①筋肉痛が技術練習の邪魔をする
筋力向上を目指したウエイトトレーニングに取り組むと、どうしても筋肉痛が発生してしまうことがあります。そういった痛みのある状態で競技練習を実施すると、いつもよりもタイムが遅かったり、動きや泳ぎの感覚が著しく低下していることがあります。
現場の感覚としては当たり前だと思いますが、研究論文によっても指摘されています。
✅筋肉痛がある状態では、運動技能の学習を阻害する可能性が示唆されています。
✅トレーニングによる筋肉痛に限らず、慢性的な痛みによっても神経可塑性を阻害する可能性が示唆されています。
(Nikola Stanisicら:2022)
つまり、運動時に痛みを抱えていることでトレーニングの効果を下げるかもしれないと考えられます。
より質の高い競技練習を継続していくためには、筋肉痛を抑えるための戦略も必要となってくるでしょう。
②筋トレで体力を使ってしまい競技練習の邪魔をする
練習やトレーニングに使うことのできる時間には限りがあります。
時間が空いたからといって無計画にウエイトトレーニングで追い込んだあと、競技練習へ向かう。当然ですが、筋トレで追い込んだあとの競技練習はヘロヘロです。そんな状態での練習の質はどうでしょうか?
また、競技コーチと筋トレ指導者が別々である場合に発生しがちな問題としては、トレーニング計画の連携・共有が取れていないことがあります。そのようなケースでは、競技練習のメインと筋トレのメインが同日にぶつかってしまうこともあるかもしれません。こうなったらいよいよ誰も得しません。。
No.100記事でも述べましたが、競技練習を優先していく上で、筋力トレーニングとの順序および頻度を調整していく必要があります。
③筋トレでの動作(チカラの入れ方)が競技動作の邪魔をする
筋力を高めようとするウエイトトレーニングでは、高重量を正しいフォームで扱えるようになっていくことが求められます。
そのような過程で筋トレに適したチカラの入れ方が身についていくでしょう。
しかし、水泳では速く泳ごうとするとき、チカラを抜く瞬間とチカラを入れる瞬間を交互にまたは部分別に同時並列的に強調するケースが多いかと思います。
筋トレで身につけたチカラ発揮と競技動作で必要とされるチカラ発揮の様式は異なるかと。なので別々の練習でそれぞれを高めていくことが必須です。その優先度や練習の割合は対象者の習熟度によってかなり異なるでしょう。
指導現場ではまだまだ「ウエイトトレーニングやって筋力高めて、たくさん泳げばどうにかなるだろ!」って考えている人は多いものです。
まとめ
水泳選手が、競技練習と並行して筋力トレーニングに取り組んでいく際の起こりうるデメリットについて述べてきました。
筋トレ単体で効果的なことだけを追求することも短期的には良いでしょう。時期によってはそれも大切な視点だと思います。
ですが、競技結果に結びつけようとする視点や計画があるか?いま一度立ち止まって考えなくちゃね。
競技コーチたちからは、どんな筋トレ指導者が求められているのか?
ここまで述べてきた内容から感じ取られる方も多いかと思いますが、競技コーチ目線でストレングストレーナーを雇うなり連携を取る場合に求められるのはコミュニケーション能力です。
もちろんその他にも多くの能力が求められるとは思いますが長期的に見ると人間性が求められるまたはマッチすることが重要なのでしょう。競技者のパフォーマンスを向上させるサポートというのはほとんどの場合が長期的な計画のもとに実行されます。
SNS上で誰の得にもならなそうな罵り合いを繰り広げいているようなトレーナーには仕事を任せたいとは思えないでしょう、、。私も気を付けていきたいと思います。
スポーツトレーナーを目指す方へ
記事の本題とはそれちゃいますが、ついでに書いてみたいと思います。
きっと人間は嫉妬深かったり縄張り争いが好きだったりします。このような前提をもって、競技者やその周辺の人たちとの関係を築いていくことがオススメです。
そういった配慮を積み重ねていくことで、あなたに任せてくれる仕事の範囲が少しずつ広がっていくのだと思います。
スポーツトレーナーとして、あなたが実現したい夢や目標がもしあれば、つらくなったときに思い出してみることも良いかもしれません。